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し(1)五十音図サ行第二段の仮名。 硬口蓋摩擦音の無声子音と前舌の狭母音とから成る音節。(2)平仮名「し」は「之」の草体。 片仮名「シ」は「之」の草体の変形。IIし(感)(1)人を制して沈黙させるときなどに発する語。 しい。 しっ。
「~, 静かに!」
(2)牛馬を進ませたり, 邪魔なものを追い払ったりするときに発する語。 しい。 しっ。「~, あっちへ行け」
(3)(狂言で)呼びかけの言葉。III「是に言葉をかけう, ~, ~, 申し/狂言・餅酒」
し植物ギシギシの古名。 [和名抄]IVし【仕】つかえること。 つとめ。~を致・す〔公羊伝(宣公元年)〕官を辞する。 致仕する。Vし【使】(1)つかい。 使者。(2)「検非違使(ケビイシ)」の略。(3)〔仏〕 煩悩(ボンノウ)の異名。 煩悩が人間を迷いの世界に流転させることからいう。VIし【其・汝】(1)中称の指示代名詞。 物や人をさす。 それ。「枯(カラ)野(=船ノ名)を塩に焼き~が余り琴に作り掻き弾くや/古事記(下)」
(2)二人称。 おまえ。 相手を軽んじあるいは親しんでいう語。「さきくさの中にを寝むと愛(ウツク)しく~が語らへば/万葉 904」
(3)反照代名詞。 自身をさす。「老人(オイヒト)も女童も~が願ふ心足らひに撫でたまひ/万葉 4094」
〔すべて格助詞「が」を伴った形で用いられている〕VIIし【刺】名刺。~を通・ずる名刺を出して面会を求める。VIII「唖々子の名を借りて~・ずる/日乗(荷風)」
し【史】(1)歴史。(2)歴史を記す人。 記録をつかさどる役人。 史官。(3)律令制で神祇官・太政官の主典(サカン)。 大史と少史とがあり, 記録をつかさどった。(4)漢籍の分類法である四部(経・史・子・集)の一。 歴史・地理・政治に関する書物など。~に三長(サンチヨウ)あり〔唐書(劉知幾伝)〕歴史を記す人間には, 才能・学問・見識の三つの長所が必要である。IXし【司】律令制で, 省に属し, 職・寮に次ぐ役所。Xし【四・肆】数の名。 三より一つ多い数。 よ。 よつ。 よっつ。 よん。〔「肆」は大字として用いられる〕~の五の言・うなんのかのと文句を言う。XI「~・って約束を守らない」「~・わずにさっさとやれ」
し【士】(1)男子。 特に, 学問・道徳を修めた男子についていう。「同好の~」「好学の~」「高潔の~」
(2)さむらい。 武士。(3)古代中国で, 大夫と庶民との間に位した身分。XIIし【姉】同輩以上の女性の氏名に付けて, 尊敬の意を表す。XIIIし【子】※一※ (名)(1)こ。 こども。(2)五等爵の第四。 子爵。(3)独自の思想・理論をもって一家をなした人。 有徳の人。 特に, 孔子。「~のたまわく」
(4)漢籍の分類法である四部(経・史・子・集)の一。 経書以外の諸子百家の書, 農学・芸術・宗教に関する書物など。※二※ (代)二人称。 自分と同程度の相手をさす。 古めかしい言い方。 君。「~の考えやいかん」
※三※ (接尾)(1)動作性の名詞に付いて, そのことをもっぱら行う男子の意を表す。「読書~」「編集~」
(2)古く, 貴族の女子の名に添えて用いる。「光明~」「式~内親王」
(3)名前の下に付けて親しみの意を表す。「やや点兵衛~, どうなすつた/滑稽本・浮世風呂 4」
(4)自分の名の下に付けて, 卑下する意を表す。「芭蕉~/芭蕉書簡」
(5)助数詞。 碁石, 特に置き碁のとき置く石を数えるのに用いる。XIV「三~置く」
し【市】地方公共団体の一。 人口五万以上を有し, 中心市街地にある戸数が全体の六割以上を占め, その他都市に必要な諸施設・諸要件を備えていることなどの条件を満たしているもの。XVし【師】※一※ (名)(1)学問や芸能などを教える人。 先生。 師匠。「~と仰ぐ」「~の恩」
(2)僧侶・神父など宗教上の指導者。(3)中国, 周代の軍制で, 二五〇〇人を一師という。 転じて, 軍隊, 戦争。※二※ (接尾)(1)技術・技芸などを表す語に付けて, その道の専門家であることを表す。「医~」「講談~」
(2)僧侶・神父などの姓氏に付けて, 尊敬の意を表す。XVIし【志】(1)紀伝体の史書で, 天文・地理・礼楽などを記述した部分。(2)律令制で, 衛府の主典(サカン)。XVIIし【枝】助数詞。 細長い物を数えるのに用いる。XVIII「長刀一~」
し【梓】〔古く梓(アズサ)の木を用いたことから〕版木(ハンギ)。「是を~にちりばめ/浮世草子・二十不孝(序)」
~に上(ノボ)・す書物を出版する。 上梓(ジヨウシ)する。XIXし【歯】(1)は。(2)年齢。 よわい。~を没(ボツ)・す〔論語(憲問)〕命が終わる。 死ぬ。XXし【死】(1)死ぬこと。 生物の生命活動が終止すること。 宗教的には彼岸に赴くことをいい, 魂の更生ないしは転生を意味する。⇔ 生「父の~」「~に臨む」「~に瀕(ヒン)す」(2)死罪。~一等(イツトウ)を減・ずる死罪になるはずのところを, 減刑して死罪の次の刑とする。~は或(アルイ)は泰山(タイザン)より重く、或は鴻毛(コウモウ)より軽し〔司馬遷「報任安書」〕死はある時は重んずべく, ある時は軽んずべく, その価値は義にかなっているかどうかによって決すべきである。~を軽(カロ)く・す死を恐れず事に当たる。 死を軽んずる。~を決・する死ぬ覚悟をする。「~・して事に当たる」
~を鴻毛(コウモウ)の軽きに比す〔「鴻毛」は鴻(オオトリ)の羽毛で, きわめて軽いもののたとえ〕(国家や君主のために)身をささげていさぎよく死ぬことは少しも惜しくない。 命は鴻毛よりも軽し。~を賜(タマワ)・る自殺を命ぜられる。~を賭(ト)・す命を投げ出して事に当たる。~を視(ミ)ること帰するが如し〔大戴礼(曾子制言上)〕死ぬことを我が家に帰るように思う。 従容として死を恐れぬ。XXIし【氏】※一※ (名)「うじ(氏)」に同じ。※二※ (代)三人称。 男子に対して, 敬意をこめて用いる。 彼。「~は斯界の先達であります」
※三※ (接尾)(1)人の姓名に付けて尊敬の意を表す。 主として男子に用いる。「山田太郎~」
(2)氏族の名に付けて, その氏族の出身であることを表す。「藤原~」
(3)助数詞。 尊敬の意をこめて人数を表すのに用いる。XXII「人(ニン)」の尊敬語。 「御出席の三~」
し【糸】(1)いと。(2)数の単位。 一万分の一。(3)歩合の単位。 割の一万分の一。XXIIIし【視】名詞の下に付けて, …と考える, …とみなす意を表す。XXIV「重大~」「問題~」「困難~する」「白眼~する」
し【觜】二十八宿の一。 西方の星宿。 觜宿。 とろきぼし。XXVし【詞】(1)ことば。 文章。 詩歌。(2)中国の歌曲の一体「填詞(テンシ)」のこと。(3)国文法で, 単語を文法上の性質から二大別したものの一。 (ア)橋本進吉の説では自立語をいう。 (イ)時枝誠記の説では, 概念過程を経て表現された語, すなわち, 事柄を表現する語をいう。⇔ 辞XXVIし【詩】(1)文学の形式の一。 一定の韻律などを有し, 美的感動を凝縮して表現したもの。 内容的にはギリシャ以来抒情詩・叙事詩・劇詩に大別され, 近代にはいって定型を廃した自由詩・散文詩が盛んとなった。(2)人の心に訴え, 心を清める作用をもつもの。 また, 詩的趣があるさま。「彼の生き方には~がある」
(3)(和歌・俳句に対して)漢詩のこと。~に別才(ベツサイ)あり〔滄浪詩話(詩弁)〕詩作は学問の浅深に関係なく, 特殊の才能による。~を作るより田を作れ文芸に精力を使うよりは, 実生活に利益のある仕事に精を出すべきだという意。XXVIIし【資】(1)もとで。 財貨や財産。「~を投ずる」
(2)生まれつき, 資質。XXVIIIし【食】たべもの。XXIX「一箪(イツタン)の~一瓢(イツピヨウ)の飲(イン)」
し【駟】四頭立ての馬車。 また, その四頭の馬。~の隙(ゲキ)を過ぐるが若(ゴト)し〔礼記(三年問)〕四頭立ての馬車が壁のすき間の向こうを駆け抜けて行くように, 一瞬のことである。 月日のたつのが早いことのたとえ。~も舌(シタ)に及ばず〔論語(顔淵)〕言葉の伝わるのは四頭立ての馬車よりもはやい。 言葉は慎むべきである。
Japanese explanatory dictionaries. 2013.